構成を考えるのって大切です。
早速ですが、質問です。これまで映像を編集をしてきた時に、
動画を撮ってきて編集してみたけど思ったように映像が繋がらない。
同じような映像ばかりで動画が単調になってしまう。
なんてことはなかったでしょうか?
実はこれ構成を考えてなかったことで起こりやすい問題なんです。
こういった問題は構成をあらかじめ考えておくことでかなり減らすことができます。
映像制作の構成は家づくりで言えば設計図の部分です。設計図がないと家が建たないのと同じく、構成がしっかりしていないと番組がつまらなくなってしまったり最悪の場合、番組自体が成り立たなくなってしまうこともあります。
今回の記事では、構成の考え方の基礎的な話や実際に制作の現場での使われ方などについて詳しく解説していきます。
番組制作での構成の役割について
冒頭でも触れた通り、構成は設計図のようなものです。もう少し具体的に表現すると「映像の流れを明確にするもの」といえます。
これを表しているので最も有名なのが「起承転結」です。ネットの辞書に載っていた言葉をそのまま引用して読み上げますね。
「起承転結」
漢詩の四句からなる絶句における構成法の一つ。
八句からなる律詩においても二句ずつまとめて絶句に準じる。
第一句(起句)でうたい起こし、第二句(承句)でこれを受けて発展させ、第三句(転句)で場面や視点を転じ、第四句(結句)でこれらを受けつつ全体をしめくくる。また、文章や話などで全体を秩序正しくまとめる構成の意として用いられる。さらに広く物事の順序、展開のしかた、構想にも用いられる。第一句(起句)でうたい起こし、第二句(承句)でこれを受けて発展させ、第三句(転句)で場面や視点を転じ、第四句(結句)でこれらを受けつつ全体をしめくくる。また、文章や話などで全体を秩序正しくまとめる構成の意として用いられる。さらに広く物事の順序、展開のしかた、構想にも用いられる。
三省堂 新明解四字熟語辞典より
はい意味がわかりません。なんとなく始まりがあり、発展して、場面が転じて、全体が締められる。ということは分かりましたが辞書の言葉だけを見てもぶっちゃけよくわからないと思うんですよね。
私もこの仕事をしていなければあまり意識しなかったこの起承転結ですが、実はこの起承転結は辞書に書いてある言葉以上に、番組の構成を考える上ではとても有効な手段なのを知りました。さらに理解が深まると映像だけでなく漫画や小説なども基本的には起承転結でできていることがわかります。
ということで、ここからはこの起承転結を使って番組がどうやって構成されているのかをもう少しわかりやすく噛み砕いてご紹介します。
テレビ番組から構成を考える
それでは、よくある番組のパターンをまずは見てみましょう。大体こんな感じの流れで作られていることが多いです。
起承転結に当てはめて見て見ましょう。
まずは「起」のパートです。構成では、オープニングや状況説明がここにあたります。番組の趣旨にもよりますが、番組の流れやルール、状況などをここで提示することで、視聴者が混乱しないようにします。
ここは承のパートです。動画内のゴール向かうまでの過程を示すことが多いです。最初の状況説明に沿って出演者や対象が行動するパートですね。
うまくいっているところにトラブルが発生したます。転のパートです。問題が発生する場合や壁にぶち当たりそこから解決に向かうまでの流れを描きます。大抵の場合はここが一番の見せ場であることが多いです。
転で起きた問題や課題がここで解決し目的を達成します。場合によっては失敗して「俺たちの戦いはここからだ」バージョンで締めくくるパターンまずまずあります。
これが一番オーソドックスな起承転結の考え方です。ここがベースとなり様々なパターンに派生します。
起承転結を応用することで内容に広がりが出る
転起承転結
ここからさらに構成の応用編について考えてみましょう。
例えば転起承転結のパターンです。
このパターンは、最初に問題の場面やハイライトの部分を見せてから、起承転結に持っていくパターンです。
これは前後の流れがわからない状態で、あえて1番の盛り上がりの1シーンを持ってくることで、何があったんだ?
と見ている人の興味を引くことができます。最近はYouTubeでもこの手法をとっている動画は多いですよね。
ロングレンジ起承転結
起承転結を長いスパンで考える手法です。
「起」のパートだけで1つの映像で完結させ、承も転も結もそれぞれ1つの映像にしていく。という1つの映像を見ただけではわからないようにしてシリーズ全体で起承転結を描いていく形です。
第一話「起①」第二話「起②」第三話「承」第四話「転①」第五話「転②」第六話「結」
ショートレンジ起承転結
逆に短いスパンで起承転結を描くこともできます。
それこそ10分おきに問題が発生するような目まぐるしい展開の場合は、このサイクルが短い場合も多いです。
ドラマや映画はさらに複雑
映画やドラマなどはさらに複雑です。
例えば、起承転結のそれぞれのパートの中にさらに細かい起承転結が含まれていることなどがあります。
これはそれぞれの専門家が総力を結してできるからこそ出来る芸当で、個人では中々難しい領域ですね。
イメージするとこんな感じです。
起:オープニング 承:物語進む 転:問題発生 結:次回へ
起:前回からの続き 承:解決に向けての努力 転:新たな事件発生 結:次回へ
転:問題との対峙 起:嫌な予感 承:問題へ近づく 転:事実発覚 結:衝撃のラストへ
起:問題の全容解明 起:原因への対策を考える 転:問題発生する果たして 結:無事に解決終了へ
これでもかなりざっくりです。これを専門で考える「構成作家」「脚本家」というプロがいるくらい奥の深い世界なので、ここで語るのはおこがましいくらいなのですが、それくらい専門性の高い分野ということがわかっていただけたかと思います。
ちなみに有名なところで言うと「新世紀エヴァンゲリオン」は起承転結と同列で語られる「序・破・急」を生かしてシリーズにしていましたね。実際に内容はめちゃくちゃ複雑ですが、タイトルだけ見るとわかりやすいですね。
「序破急」
能や浄瑠璃などで、脚本構成上の3区分。「序」は導入部、「破」は展開部、「急」は結末部
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」
日本のアニメーション映画シリーズ。全4部作。『新世紀エヴァンゲリオン』を新たな設定とストーリーで再構成したリメイク・リブート作品[注 2][5]である。株式会社カラー制作。庵野秀明脚本・総監督。
大災害「セカンドインパクト」が起きた世界を舞台に、第3新東京市に襲来する謎の生命体「使徒」と、巨大な人型兵器「エヴァンゲリオン」のパイロットとなった少年少女たちとの戦いを描く。
第1作(前編)『:序』が2007年に、第2作(中編)『:破』が2009年に、第3作(後編)『:Q』が2012年に、第4作(完結編)『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』が2021年に公開された。
出典:Wikipediaより
構成なくして映像なし
いずれにせよ、様々な映像というのは、この構成を基に作られているということがわかったかと思います。
ではここからは初心者でも出来る比較的簡単な構成の作り方を解説します。
まず構成を作るにあたっては、構成となる要素をピックアップしておく必要があります。
すでにあらかたの調査が終わっていればいいですが、もし終わっていない場合は、企画に対する下調べをして情報集めておくことが重要です。
ポストイットを使って構成を考える
映像を作る要素のピックアップが終わったら構成作りに入ります。
構成をする上で一番やりやすい方法の一つとして付箋・ポストイットを使ったやり方があります。
付箋1枚に対して1つずつ番組の要素となる情報、必要なシーンを書いていきます。ここではあまり内容にこだわる必要はありません。思いついたらどんどん情報を追加していきます。
ある程度情報が出揃ったら、今度は番組の中での優先順位を決めていきます。絶対に必要な内容・シーン。補足情報。関連した内容などいくつかの項目に分類できることができると思います。そこで構成の中で使う内容と使わない内容を取捨選択していきます。
この時に判断に迷う時があると思います。そう言った時は、企画のテーマに沿っているか沿っていないかが重要です。内容は面白くてもテーマから逸れている場合は、弾くことも必要です。
そうするとある程度必要な情報が絞れてきますので、ここで起承転結のどのパートで使うかを付箋を並べ替えながら考えていきます。
ある程度並べ替えが終わったらワードやエクセルなどで制作した構成表に落とし込んみます。
ここで最終的に流れを組んでみて違和感があるかないかを最終的にみていきます。
こうすることで構成の完成です。
いかがだったでしょうか?この方法は、頭に浮かべて考えるよりどんどんアウトプットしてそれを並べ替える方がスッキリするしわかりやすくなるのでおすすめです。またチームで映像を作る際にも有効です。
これを元にロケに出て撮影をしていくことでスムーズなロケができるようになります。
さらにロケの時間が限られていて出来るだけ必要なカットだけを効率よく取りたい場合は、
香盤表という構成表に加えてロケのスケジュール全体の流れを記載した表を作るとさらに便利です。
まとめ:構成を考えるだけでも動画のクオリティは上がる
今回は、動画の構成についてお伝えしました。構成はある程度ストーリー性のある映像や動画には必要不可欠な要素です。冒頭にもお伝えしたように構成がしっかりしていないと場合によっては番組がなりたない可能性もあります。
個人で簡単に映像が撮れる時代にはなりましたが、この構成の技術はまだまだ専門性の高い領域の仕事です。もし映像などでお困りの場合は経験のあるプロに任せてみるのも一つの方法です。
ちなみに筆者も長年映像制作の仕事をしてきたのでもちろん対応可能ですので、お気軽お問合せください。